まだ仕事をしていたとき、町内の同業の人たちの勉強会のような集まりがあって、主な内容が終わった頃、10代(主に高校生くらいの年齢)で望まない妊娠をしてしまった人に、どういう選択を勧めたらいいか、というような話になったことがある。メンバーには、未婚の人もいたし、既婚の人もいた。出産経験者もいたし、不妊治療中の人もいた。
出産した方がいい理由、悪い理由、出産しない方がいい理由、悪い理由・・
命は大切なのだということは、誰もがわかっている、わかった上で、
わたしは、出産した場合、10代で母親になってしまった女性の将来の可能性が狭まってしまうという理由で、出産しないほうがよいと思っていた。
中絶手術の危険性という話になったとき、その手術は、ホントにそんなに危険なのかという疑問の声があり。いや、今の日本では、中絶手術で後遺症を残したり、命を落としたりということは、そんなには無い、むしろ、出産で命を落とすことが、意外に多いのだ、という説明あり。いわゆる性教育で、中絶手術の怖さをことさら強調する、というやり方をしていたことがあった。そのせいで、そんな勘違いをしてしまうのかもしれない。お産は病気じゃないって言うけれど、出産というのは、あんがい危険なもので、命を落とすかもしれない覚悟がいる、ということを改めて認識した。中絶より、出産の方が危険・・

わたしは里帰り出産で、産院には母が付き添ってくれた。生まれたのは明け方。母がダーリンにいますぐ電話すると言ったけど、まだ眠ってる時間だし、仕事があるから、起きる頃になってから電話して欲しい、って言ったら、奥さんが一晩中寝ないで、死ぬ思いして生んだのに、だんなさんが寝てるって話は無い、一日眠いくらいなんだ、電話ジャンジャン鳴らして起こしてやる、って言って電話をかけに行った。昭和一桁生まれのこの母は、いまだに月経のしくみすら理解できていないけれど、出産は命がけ、ということは知っていたらしい。言葉は乱暴だけど、母の気持ちがうれしかった。

死ぬ思いはしたけれど、死ななかったのは、一晩中寝ないで付き添ってくれた母と、助産婦さんと、お医者さんと、看護婦さんたちのおかげだっていうことを、忘れないでおこうと思う。わたしや母は、あれ以来、一晩中寝ない日なんて、数えるほども無いけれど、病院のみなさんは、いつもいつも、一晩中寝ないで、死ぬ思いをしている人たちを支えているのでしょう。それこそ、まいにち死ぬ思いかもしれない。